アオアシのアシト君を100回描いて一番アシト君っぽい絵をAIに決めてもらう

まず、突然下手な絵を見せられて不快になられた方、ごめんなさい。

今しがた32人目のアシト君を描き終えたところで迷走中の立川豊です。あと68人も描かなきゃいけないと思うと気が重すぎる。

アシト君とはビッグコミックスピリッツで連載中の大人気サッカー漫画『アオアシ』の主人公である青井 葦人(あおい あしと)君のことだ。

サッカーのルールとかぜんっぜんわからんけど『アオアシ』を読んでる。サッカーシーンの迫力とか今にも動き出しそうな臨場感とか個性豊かなキャラクターたちのサッカーを通した人間模様とか、めっちゃ面白いよね。

それはそうと、なぜ俺が32人もアシト君を描いているのか説明しよう。

~数時間前~

いつも通り、彼女とのデートの待ち合わせに遅れた。名誉挽回のために言っておくと寝坊ではない。きちんと1時間前の9時には起床している。その後肩までしっかり湯船に浸かってスマホで「意味が分かると怖い話」を読んでいたら、うっかり集合時刻を過ぎていたのだ。いったい誰に非があるというのか。たぶん読んでいたサイトが悪い。

彼女には、謝罪のメッセージを送った。

返事は、こう。

いつもなら「ウフフー。全然オッケーだよー♪」なんてローラかって思うくらい軽い感じで許してくれる心優しい彼女が、なぜか今日は冷たい。やべ、俺なんかした?

不安になって、湯船から出て、スマホを風呂場の外に放り投げて頭洗った。頭を洗いながら考える。怒っているのだろうか。どうしたらいいだろう。うーん。答えが出ないままシャンプーを洗い流し、体を洗った後、風呂場を出た。

彼女から新しいメッセージが来ている。

デートの約束をしていたのに、「帰る」と言っている。由々しき事態だ。ドライヤーで髪を乾かしながら返信する言葉を考える。考えているうちに次のメッセージが来た。

許す条件が独特過ぎる。

こんな無茶ぶりがいまだかつて地球上に存在しただろうか。だがしかし、ここで返事を間違えれば破局に繋がりかねない。俺はドライヤーのスイッチを切るとおそるおそるメッセージを入力した。

という訳で、現在に至ります。

贖罪と感謝のアシト君100人描き

特によくわからないままアシト君を32人描いた。ちなみにベースにしたアシト君は単行本16巻の表紙だ。

この巻はフォワードにしか楽しみを見いだせていなかったアシト君がディフェンスの楽しさに目覚めるお気に入りの巻だ。俺が100回描くアシト君はこれしかない。

そう意気込んで描き始めたものの、32人描いて迷走してしまったのでちょっと振り返ってみよう。

1~7回目

いや、描けてない。

そもそも俺は漫画のキャラクターの絵なんてこれまで描いたことが無い。お世辞にもアシト君とは言えない絵が並んでいる。鉛筆なんか久々に持った。彼女はなぜこんなこと言い出したのか。許す気なんかもとからないんじゃないか。

3回目の顔、怖すぎ。

8~16回目

人の顔ってこんなに難しいのか。ひとつひとつのバランスが全然わからない。きちんと表紙を見ながら描いているはずがその通りに描けない。なぜだ。かつて二重の極みを覚えようと何度も練習したけど岩は全然砕けなかった。むしろ手にひどい切り傷を負った。それに近い感覚だ。輪郭がまず描けない。というかなんか勝手なイメージで人の顔を描くときに十字線描いてるけど、

これって何のためにあるんだろう。わからない。でも美術系の人たちってこれ描いてるでしょ?だから描いてみたけどイマイチ効能がわからない。マンガ『聲の形』の登場人物たちも顔にバッテンついてたけど、あれと同じなのだろうか。

とりあえず輪郭の練習だけして10回目挑んだら結構上手く描けた。自分でも驚き。ただ、10回目で全ての集中力を使い切ったのだろう。

力尽きてただの落書きみたいになった。

17~22回目

徐々にアシト君を掴めてきている気がするが、髪の毛が全く描けていないことにお気づきだろうか。ただぐしゃぐしゃっと鉛筆を走らせているだけだ。そして上手く書けたかな?と思うと次バランスが崩れる。一進一退の攻防だ。再度バランスの練習を繰り返しながら描いていくが納得のいくアシト君とは言えない。

23~27回目

奇跡的に輪郭が上手くいって顔は良い感じに描けたとしても、髪の毛が相変わらず描けない。見たままを描いているつもりが出来上がると全く違うものが出来上がる。漫画とかでよく出てくる料理下手ヒロインのようだ。主人公とかが丁寧に手順や具材を教えても結局マズイ料理が出来上がるのはお約束だ。その時のヒロインの心境とはこんな感じだったのか。マジメにやってるつもりでも全く出来上がらない。そんな料理下手美少女ヒロインのつもりで続きを描いていこう。

28~32回目

これで32人目のアシト君を描いたわけだが、お気づきだろうか。ある程度から全く進歩が無い。

個人的にも「よっしゃ!上手いの描けた!」みたいな感じだとスラスラ鉛筆が進むが、全然アシト君を描けずにここまで来てしまっている。もう彼女への贖罪というより、純粋に上手いアシト君を描きたい気持ちになっている。だが、ここまで進歩がないと徐々に心が折れてくる。上手い絵が描きたい。でも、描けない。どうすればいいだろう。そこで冒頭の迷走してる写真に戻るわけだ。

だが、いつまでも迷走をしてられない。あと68人ものアシト君を描かなければならないのだ。早く次のアシト君を描こう。

と、思ったときにアクシデントが起きる。迷走して紙を無駄にしているうちに紙が無くなってしまったのだ。

ので、ペンタブを買ってきた。

俺の職業的に、紙よりパソコンに向かっている方が集中力が持続すると思うんだよね。これなら紙を無駄にすることもないし。

さぁ、68人のアシト君よ、かかってこい!

33~38回目

ところで大事なこと見落としていたけど、紙の上に描けなかった奴がペンタブで絵描けるわけなくない?

振り出しに戻った気がする。早くも心が折れそうだ。「38人描いたから許してほしい」とメッセージを送ろうか。いや、それで逆に怒りを増幅してしまったら大変だ。以前も彼女がスーファミの聖剣伝説2をやってる時に途中で操作を横取りしてボスを倒したらめっちゃ怒られたのだ。

そう、彼女は中途半端が嫌いだ。やりきるしか二人の関係を修復する術はない。

39~50回目

43回目に注目いただきたい。

よく描けてない?

ここにきてようやく個人的に上手いと思えるものが描けてきた。しかしその後、なぜかアシト君がだんだん太っていく。元モーニング娘。9期のズッキこと鈴木香音ちゃんが一時期めっちゃ痩せていた時を彷彿とさせる。俺は卒業間近の健康的な体系の方が好き。

※参考動画

50人目のアシト君を描いた後、作業がパソコンに移ったことによってトレースができるという事実を思い出す。トレースは許さないと言われているからあくまで練習用だ。ひたすらトレースして手にアシト君の絵を覚えこませ、51回目以降に活かす。我ながら良い作戦だ。いつの間にかあと半分。あと50人のアシト君を描けば俺は彼女に許される。スケットダンスのボッスンよ。俺に力を貸してくれ!集中モード。キィーン。

51回目~90回

一気に90回まで来た。

相変わらず下手なものは下手だが、試行錯誤しながら、少しずつアシト君っぽい絵も描けてきた。髪も自分なりの描き方が定着してきた気がする。

だが、ここでペンが止まっしまった。手が痛い。普段キーボードをカタカタ打つことはあってもペンを握って長時間絵を描いたことはない。小学生のころに漢字練習帳という拷問のごとくひたすら漢字を書かせるノートがあったが、それを無心で埋めていく時の心境だ。

ネテロ会長を思い出す。ハンターハンターのネテロ会長は、感謝の正拳突きを1日1万回行ったという。「気を整える・拝む・祈る・突く」の一連の動作を1万回行うのだ。狂気の沙汰ではない。

ネテロ会長でもはじめは18時間かかったという。それに比べればアシト君を100回描くことなどたやすい。俺も会長を見習って「気を整える・拝む・祈る・描く」の一連の動作で描いていこうじゃないか。

いつも遅刻する俺を待っててくれてありがとう。

待ち合わせ場所をいつも俺の家から徒歩10分のところにしてくれてありがとう。

デートと称して1日中喫茶店で仕事させてくれてありがとう。

ある日突然「明日琵琶湖行かない?」と言っても、翌日には東京から一緒に弾丸旅行してくれてありがとう。

映画館で塩&キャラメルポップコーン食べるとき、俺が塩味ばっかり一人で食べてても怒らないでくれてありがとう。

地球防衛軍やってるとき、俺は一人で敵陣へ突っこんでいって案の定死ぬのに、復活させてくれてありがとう。

借りた小説全然読んでなくて自分の本棚に飾ってるの、黙認してくれてありがとう。

知らんぷりして勝手にジュース飲んじゃっても、怒らないでくれてありがとう。

俺の散らかった部屋、いつも片づけてくれてありがとう。

こんな俺と5年も付き合ってくれて、ありがとぉぉぉおぉぉおおおお!

描ききった。ついに、やった。100枚描いた。これで……これで、彼女に許してもらえるだろうか。早速メッセージを送ってみよう。

あれ?

てっきり「すごい!見直した!許す!私も会いたい!」とか返信が来てハッピーエンドかと思ったら、違った。なぜか疑われている。いや、確かにどう見てもアシト君に見えないやつもいるよ?複数いるよ?それを指摘しているのだろうか。

AIを使ってアシト君かどうか判定しないと信じられない?

エーアイヲツカッテアシトクンカドウカハンテイシナイトシンジラレナイ?

何を言っているんだろうか。

え、怖っ。怖すぎて反射的に了承してしまった。営業やってた時の上司もこんな感じで怒ってきたのを思い出した。

俺はアシト君を100人描いたあげく、アシト君を判定できるツールを作って判定しなければならないらしい。一難去ってまた一難。さっきの達成感を返してほしい。待ち合わせの遅刻というのはこんなにも業が深いものなんだろうか。いや、知らず知らずのうちにそれくらいの業を積み重ねてしまったのかもしれない。

早速、アシト君っぽさを判定するツールを作ることにした。

アシト君の絵は桑ちゃんの夢を見るか

アシト君を判別させるにあたってWatson Visual Recognitionというのを使っていく。ワトソン君はAIで有名なところだ。俺みたいな知識の無い野郎でも画像認識の判別器が作れちゃう優れモノ。あやかるしかない。

アシト君を判別するにあたって正解となるアシト君の画像を50枚くらい登録する。

ついでに「アシト君では無いもの」の画像として以下のキャラクターたちを登録した。

・ルフィ(ワンピース)
・うずまきナルト(NARUTO)
・赤木剛憲(スラムダンク)
・フリーザ(ドラゴンボール)
・桑原和真(幽遊白書)

画像認識について全然知識無いけど、これくらい画像登録しておけばいい?とりあえずこれで作ってみよう。さぁ判別器を作っていこうか。パソコンの前で念じていく。

※イメージ画像

https://wakabatimes.com/ashitokun-check/

できた!

このページに画像を入れると「アシト君っぽさ」を数値にしてくれるはずだけど、さて、本当にうまく判定してくれるのだろうか。試しに描いた元になった16巻表紙のアシト君で判定してみる。

おぉー!アシト君っぽさが90.9くらいあるって!そりゃそうだ!本物だし!

きちんとアシト君を認識できてるっぽいし、それじゃあ満を持して俺の描いたアシト君も判定してみよう。

キター!1枚目からアシト君っぽさが68.9もある!良かった!1枚目からアシト君っぽいって認識してくれるなら2枚目以降も問題ないはず。

ゴリ先輩になった。嘘だろ。

逆に?顔全然違うけどこれ逆にアシト君なの?嘘だろ。

嘘だよね???

混乱してきた。俺ってアシト君描いてたつもりがスラムダンクのゴリ描いてたの?

本物の画像判定した時は90.9だったから、つまり、この絵が限りなく本物に近いってことだろうか。そんなバカな。

なんて精度の悪い判定器を作ってしまったのだろう。いや、判定器のせいにしてはいけない。俺の絵が下手なせいだ。でも後半はどんどん絵も上達してるし、きっとアシト君っぽいと判定されるに違いない。

桑ちゃん?

後半、ずっと桑ちゃん。


想像してごらん、自分が「アシト君」だと思って描いた絵を「いや、桑ちゃんっぽいです」って言われる気持ち。自分の認識を疑いたくなる。ひょっとして俺が見ている景色とみんなが見ている景色って全然違うの?知らない人は検索してみてほしい。桑ちゃんの頭はリーゼントだし、面長だし、切れ目だし、全然別人だけど?

とりあえず100人の判定を終えたので結果をまとめてみよう。

『アオアシ』のアシト君を100人描いているはずが、65人、あと14人、まったく別の漫画のキャラクターを描いていたという、衝撃の結末。

めのまえが
まっくらに なった! ▼

究極の遅刻防止策

彼女になんて言ったらいいのだろう。俺は結局、全然アシト君を描けていなかったのだ。今さら言い逃れなどできない。正直に話そう。

かしこまりすぎて業務連絡みたいになってしまった。

もっと練習してから100人描いていれば、もっと画像をかき集めて精度の良い判定器を作っていれば、そもそも遅刻しなければ、こんなことにはならなかったのに。後悔先に立たず。結果として俺は彼女の要求に応えられなかった。この関係はもう終わりなのだろうか……。

返事が来た。

俺がアシト君だと思って描いた絵は、AIから見れば、ほぼ桑ちゃんだった。そうか、彼女はこれを伝えたかったのだ。俺にとって遅刻は些末なことだけど、彼女にとっては寂しくて、心配で、嫌なことだったに違いない。

色々と苦難があったけど、とりあえず破局は免れました。めでたしめでたし。

何年かかるかわからないのでもう二度と遅刻しないし、みんなも遅刻するのはやめようね。

おしまい。