そもそもよ。
あ、今からそもそもな話するけど、そもそも話アレルギーの人はメンソレータム塗ってみて。あれ、めっちゃ効くから。
そもそも、普通の生活はそんなにハックする必要ないねんってことを言いたい。
あれは高校の頃かな。同じクラスの松本くんに言われたんだけど
「音楽聴きながら勉強すると効率悪いんだって」
大学の頃こんなこともあった。知り合いの知り合いくらいの人がこんなこと言ってた。
「夜型より朝型だよ。その方が集中力高まるしさ。だからレポートは絶対朝やるべき」
前の会社で同僚の木下とお昼食べに行くときにこうも言ってた。
「炭水化物食ったら血糖値が上がっちゃって眠くなっから。午後の仕事に支障出ちまうぞ」
こういうことを言われるとさ、なんかモヤる。モヤッとボール2、3個投げたい。
このモヤモヤはなに?
わからないときは聞くっきゃないよね。
教えてえぇ!アルムのーもーみーのー木よおぉぉぉ(裏声)。
アルムのもみの木「正しさを一方的に押し付けられてるからじゃよ」
アルムはそう思う?うーん、、、そうかな。
言いたいことはわかるけど、、、なんか、しっくりこない。
“正しさ”にモヤってるってよりは、その指摘そのものにモヤってる感じ。
そんなモヤモヤの正体を掴めないまま過ごしてたんだけど、
あるときブリーチの3巻読んだらグランドフィッシャーが黒崎くんに言ってた。
「言ったろう『怒りは刃を鈍らせる』!」
それに対して黒崎くんがこう返した。
「『怒りは刃を鈍らせる』か…確かにそうかもしれねぇ…」
「だけどなグランドフィッシャー。あんた一つカン違いしてる」
「テメー程度の奴を倒すのには…その鈍った刃で十分だってコトだよ!!」
・
・
・
それ!
S・O・R・E!
ほんとにそう!
おっしゃる通り!
鈍った刃で十分なんよ。
グランドフィッシャー、いや、グラちゃんさ、ちょっと聞いて。
このブリーチ3巻ってね、まるまる一冊「VSグランドフィッシャー」なわけ。お母さんの命日で家族揃ってお墓参りに行ったら仇であるアナタと遭遇。鳴らすバトルのゴング。yeah。
で、黒崎くん激おこですよ。
刀なんかも怒りにまかせちゃって、まかせすぎちゃって、空回りもいいところ。悪戦オブ苦闘。
そんでもって相棒役のルキアちゃんには俺の闘いだから手を出すなって言って更に戦力半減。
もうさ、終盤までずっとグラちゃんのターンだった。図々しい通り越して清々しいよ。目立ちたがり屋の名をほしいまにしちゃってる。そんななか満身創痍の黒崎君にグラちゃんが放った一言が
「言ったろう『怒りは刃を鈍らせる』!」
これなんだけど、ちょっと物申してもいいかな?
全力を出せてない黒崎くんだからこそ、鈍った刃だからこそ、こんだけ長引いたんだぞ、と。
世間では効率とか、生産性とか、時短とか、●分でわかるとか、●●術とか言うてますけど。
グラちゃんもそんな時代の波に流されちゃった?右に倣え精神でしょうか?本屋のビジネス書コーナーの平積みかな?
いやいや、いったい何をそんなに生き急いでいるんですか。
これでさ、黒崎くんが鈍ってなかったパターン考えてみたことある?
21~23話のくだり丸々カット。3話分も短縮されちゃうわけ。
しかも、本来だったらグラちゃんは止め刺されそうになったとき一瞬の隙をついて逃げたけど、あれもたぶんできないよ。
逃げたおかげで掴めた22巻の再登場も無くなっちゃうから更に2話分短縮。合計5話。
5話っていったらさ、コミック1冊収録できちゃうわけ。
つまり、黒崎くんが刃を鈍らせなかったらさ、
読んでる俺らは1巻ぶんの「漫画読んで楽しむ時間」を損しちゃってるんよ。
そういった類のアドバイスはさ、人から特定の時間を奪うことを自覚しようか。
これはグラちゃんだけに言ってるわけじゃない。
松本くん。大学の名前知らない人。前の会社の木下くんも。っていうか巷にはびこるライフハックもそうだけどさ、
たいていグランドフィッシャーなんだよね。
魚釣りが趣味の人に「新鮮な魚だったら魚市場に行けば釣り具代やエサ代よりも安く手に入るよ」って言ってるようなもん。
いや、ちゃうねん。
そりゃ、常に一分一秒でも惜しくて、自分の判断が寸分でもでも間違えようもんなら数億円損失する、みたいな人なら――そんな人いるのか知らんけど――全ての行動を効率良く生産性高くしなきゃなんないかもしれない。
でも、そうじゃなかったらそんなにライフをハックする必要なくない?
黒崎くんよろしく鈍った刃で十分じゃない?
何でもかんでも時間を節約する、効率よくする、生産性高くするっていうのが良いことじゃないと思うんよ。
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俺の家の近くの道路さ、
ずーーーーーーーーーーっと工事してんの。
しかもね、深夜帯。草木も眠る頃合いに。
ドドドドドドドドドドドドドって。
ぜんっぜん眠れないの。
2、3日くらいだったら「ま、しょうがないか」くらいのテンションなんだけど、何週間も続くと
「騒音の出る工程はできるだけ短くできないのか」
「もっと効率よく工事を進められないのか」
「なんでもいいから早く工事終わらせてほしい」
とか考えちゃうわけ。知らん人の知らん仕事の効率やら生産性やらを考える意味のない時間。
そんな時、こんな風にグラちゃんと鈍った刃のことを思い出すと、工事のことなんか気にしてないで、夜更かしする時間を楽しもうってなる。ありがとうグラちゃん。黒崎くん。
って思ったけど、
そもそも、工事云々関係なく、もともと夜更かししてるわ。
おわり。