顔を直視できないほど甘酸っぱい思い出

ひとりブログサーキットフェス【NOTE Stage】に掲載したものを引っ越ししました。

こんちゃーす。立川豊だってデートしたことあるっつーの。

という感じで、脳みそ夫風にあいさつしてみました。ゴールデンウィークも終盤、みなさんいかがお過ごしでしょうか。

みなさんは淡い思い出ってあります?甘酸っぱい!みたいなエピソード。

当時は別にそんな甘酸っぱいって感じはしなかったけど、今思い返すと「あれかなぁ」ってやつはあったりするよね。大学時代なんてそういう思い出の宝庫だったりするでしょ。恥ずかしいかもしれないけど、闇の深淵に葬り去るなんてもったいない。

今日はそんな記憶の片隅にあったエピソードを天日干しようじゃないか。

大学1年生ってだけで思い返すと恥ずかしくなるよね

高校時代は部活一色!色恋にうつつなんて抜かしてたまるか!と言いつつ、ただただモテていなかっただけの健全高校生だった俺は大学時代には何かあるのではないかと期待していた。

なんか高校時代と違って大学って開放的な雰囲気だし。男女が別に普通に話してるし。
なんか女子と話そうもんなら「おい、お前あの娘にホの字なんだろ~!や~い!」とかいって茶化してくるやついないし。

この環境だったら、高校時代ぜんっぜん女子と話してなかった俺でも気軽に異性と会話できるはずだと思って徐々に友達もでき始めた。

そんな矢先。近々、学部の先輩方主催で1、2年生交流会があることを知った。そこでたくさん友達とか作って、あわよくば先輩たちから面白い講義とか履修について聞きたいな。

ついでに同学年の女の子とも仲良くできればいいな、いや、ほんとについでよ?やましい気持ちとか別になくて。異性の友達とかあんまりいなかったし、この機会に増やさればいいかなぁって。

まぁ頭の中が夢の国かってくらい妄想を膨らませていた。

当日。

高校時代の俺はクラスの中心人物でもなければ、お調子者キャラでもない。ただただ、運動して勉強してるだけのストーリーの中に関わってこないタイプのモブだ。風景の一部と言っても差し支えはない。

だけど風景なんてまっぴらゴメンだ!

さらばモブ生活!

と意気込んだところで結論から言ってしまうと、人間はそうそう変われないものだ。

その懇親会でも既に「新入生のイケてるやつとはだいたい友達。イェア」みたいな人が中心になって場が盛り上がってて、俺は周辺でただ笑っているだけだった。

おかえりモブ生活。ご帰宅が早かったね。

まぁ、現実ってこんなもんよ。なんて諦めながら周りを見渡す。

華やかな中心人物たちに取り残されている人を見つけた。なんか同種な気がする。話しかけてみようか。でも、異性だ。上手く話せるだろうか。ええい、ままよ。

「ど、ど、どうも。なんか凄い盛り上がってますよねぇ」

ただの状況説明だ。やっぱりモブのセリフっぽい。急に話しかけて不審に思われただろうか。ドキドキが止まらない。

「あ、初めまして。すごい盛り上がりですよね。こういう懇親会初めてなんでちょっと戸惑ってます」

会話できた。やった。すげぇ、会話できたよ、俺。頭の中は自己を称える讃美歌の大合唱だ。

「俺も初めてで、まだ学校始まったばっかりなのに友達たくさんいて羨ましいっすよね」

お互い同年代なのに敬語で話している。距離感がつかめない。同級生で初対面の人ってタメ口でいいの?敬語でいいの?わかんない。誰か教えて。

終始戸惑いながらも少しずつ彼女と話した。彼女は柴木さんと言うらしい。

地方から上京してきてまだ友達もおらず、この会に来れば少しは友達ができるかと思い来てみたらしい。Oh 親近感。

親近感から少しずつ緊張もほぐれてきた。なんか仲良くなれそうな気がする。

10分くらい話していると、「新入生のイケてるやつとはだいたい友達。イェア」みたいな人が会話に入ってきた。

「おっじゃまー!ここに来てる皆と話そうと思って!よろしくぅ!」

そこから他数名も話の輪に入ってきて、すっかりモブに戻った。複数人だと俺はめっきり気配を消せるらしい。黒子のバスケだったら幻のシックスメンになれるかもしれない。

ただし彼らのおかげで嬉しいことが起きた。

「ねぇねぇ、連絡先交換しておこうよ!これから講義とか一緒になるかもしれないし!」

連絡先交換タイムだ。

せっかく仲良くなった柴木さんと連絡先交換したかったが、「は?なにこいつ。出会って10分程度しか話してない分際で連絡先交換とか持ち掛けんじゃねぇよ」とか思われたらどうしようと恐れるあまり聞けていなかった。

その輪にいる人たちが携帯を取り出して連絡先を交換し合う。俺もそれに乗じて自然な流れで柴木さんと連絡先を交換することができた。ビバ同調圧力。

他人の男女関係を促進したい人は何が目的なの?

懇親会後しばらくは柴木さんと交流は無かった。その日の夜に「楽しかったね。これからよろしく」くらいの内容の無いメールを送って、「よろしくー」くらいの内容の無いメールが来て連絡が途絶えた。

柴木さんと連絡を再度取るようになったのは1か月後くらいだ。彼女と1コマだけ授業が一緒だったことに気づく。その授業は大教室で行われる授業でわんさか人がいたから誰が取ってるかなんて把握できない。

ただ偶然教室を出る時に会って久しぶりに会話したことで再度連絡を取り合うようになった。

俺が寝坊して授業出れなかったときの資料とノートをコピーさせてもらったり、彼女が休んだ時に資料を余分にもらって後日渡したりしながら徐々に仲良くなってきた。気がする。

「で、柴木さんとはどうなの?」

俺が明らかに柴木さんを意識していることに気づいた友達がニヤニヤしながら言ってくる。あぁ、こいつ絶対高校時代「おい、お前あの娘にホの字なんだろ~!や~い!」とか言って茶化してた人種だよ。俺はなるべく冷静を装って別にどうもなっていないと言い返す。

「デートとか誘ってみりゃいいじゃん。っていうか誘えって」

こいつ完全に楽しんでやがる。いるよね、他人の男女関係を促進したい人。

「っていうかノートとか資料とかコピーさせてもらったんだろ?飯くらい奢るのが常識だぞ」

え?そういうもんなの?

そういうマナー的なものに疎い俺は簡単にその友達の言ったことを鵜呑みにしてしまう。

俺はなるべく気軽を装って、お礼したいからご飯を食べに行こうとメールした。

そこからしばらくして平日は遅くまで授業を入れている日とバイトが入っている日があるから休日だったら空いていると返事が来る。

俺はパニックになる。

てっきり学食とかで安いチャーハン的なものを奢ればいいとか思ってた。

休日に出かけてご飯って結局デートじゃないの?友達の思惑通りなんじゃないの?

デートってどんな感じ?

ねぇ、どんな感じ?

気になって顔が直視できない

約束の日になった。

俺は今日デートなるものをするらしい。

これが大学生なのか。休日に男女で遊ぶなんて高校時代は考えられなかった。

場所は大学から何駅か離れたところにあるショッピングストリートだ。ショッピングストリートなんて今まで言ったことも無い。そこにいるだけで何だか自分がオシャレな気分になる。全身おろしたてのユニクロだ。

「お待たせ!」

そう言って柴木さんが現れる。なんか照れくさくて顔を直視できない。

俺は周りをキョロキョロして「この辺初めて来たから新鮮」みたいな雰囲気を出すことによって顔を見ることを避けた。彼女も初めてらしく、せっかくなので少しお店を巡ってからご飯を食べることにした。

無言だ。会話が無い。俺は無い頭をフル回転させるも、会話の引き出しが無く全然話しかけられない。

おそらく彼女も元々おしゃべりなほうではないようだ。お店の商品を見てるだけで特に「これ、どう思う?」みたいなことは聞いてこない。

デートとは異性から「これ、どう思う?」って聞かれるイベントではなかったのか。想像していたものと違う。

結局1時間くらいほとんど会話が無いまま歩き続けた。

そろそろお腹すいたし、気まずいし、歩き疲れたからご飯を食べようと提案した。

提案してから重大なことに気づく。

どこで食べるか決めてない。

こういうのって事前に美味しい店とか調べておくもんじゃないのか。完全に盲点だった。時間は昼過ぎ、ちょうど飲食店が混んでくる時間帯だ。

でも決めてなかったのはしょうがない。歩きながら飲食店を探す。そしてすぐに入れそうな店を見つける。

ファーストキッチンだ。

デートでチェーンのハンバーガー店かよ、と思われる方もいるかもしれない。

でも弁明させていただくとするならば俺は知らなかった。

ファーストキッチンが地元に無かったからオシャレなハンバーガー屋さんだと思ったのだ。

二人でファーストキッチンに入り、ハンバーガーを注文して席につく。

ずっと並んで歩いていたが、ここで初めて真正面に向かい合う。

なんか久しぶりに柴木さんの顔を見た気がする。だいぶ緊張していたようだ。

ん?

俺は彼女の口元を見る。

鼻と口の間に髭が見える。

うぶ毛だけど、かなりの量生えていらっしゃる。

まぁ、まぁ、別に不思議なことじゃない。別に女性だって生えるものだし。

でも気になる。

俺は彼女の髭が気になって仕方なくなった。

彼女の話してることが全然耳に入ってこない。

ただ、別にこういうことって指摘するものでもないし、肌が弱くて剃れないとかそういう理由とかあるかもしれないし、とにかく気にするのは野暮だ。

彼女がセットのポテトをケチャップをつけて口に運ぶ。

口の上にケチャップが少し付着する。

あ、ひげに…

だめだ。どうしても気になってしまう。

俺はもうこの後からずっと自分の中で彼女の髭と格闘していた。

初デートの味は

その日はご飯食べた後てきとうにブラブラして解散した。

そしてそんなことを気にしてしまった自分に罪悪感を感じていた。

だって、髭が生えてたからって別にいいじゃないですか。何がいけないんですか。と思いつつも気にしてしまう。結局は外見かよ。見損なったぞ立川豊。と自責の念に捕らわれる毎日だ。

けっきょく柴木さんとも罪悪感を感じるうちになんか連絡を取りずらくなって、徐々に音信不通になってしまった。

「なぁなぁ、どうだった?柴木さんとのデート?」

後日俺にデートをたきつけてきた友達にそう聞かれた。俺は少し考えて

「気になりすぎて顔を直視できなかったよ」

なんて甘酸っぱい回答をしたのでした。

おわり。


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