演劇台本のフリー素材「居酒屋での会話」

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どうも。皆さまお変わりなく。普段生活していて急に演劇しなきゃいけなくなったとか、演劇当日でも全く台本ができてないとか日常生活あるあるだと思います。

そんなあなたにフリーの演劇台本を書いてみたのでもし必要な方はご自由にアレンジして使ってくだせい。

舞台

居酒屋

登場人物

男:うじうじ
友:おしゃべり

居酒屋での会話

友:いやだからさ、死ぬことをゴールだと思うから色々辛い。誕生をゴールだと思えば、いま生きていることってボーナスステージだろ。ゲームクリア後の世界なんだよね、要するに。だから別に何やったって、何をやらなくたっていいだろ。レベルを上げてもいいし、やりこみ要素をコンプリートしてもいい、金稼いでもいい、始まりの村をウロウロしててもいい。気楽にやったらいいじゃん。

男:は?ゲームだったらクリアしたあとに遊ばねぇよ。クリアしてるんだったらとっくにこんな人生やめてぇわ。

友:そりゃプレイヤー目線だろ。プレイヤー側はクリアしてすぐ別のゲームをできるけど、お前はキャラクター側だ。キャラクターはゲーム自体とかプレイヤー側に干渉できないだろ。あくまでこのゲームの中でクリア後の世界を楽しむんだよ。

男:そう考えるとゲームの登場人物ってエグイな。クリア後の世界で何やったって寒いだけだろ。

友:まぁ、そうかもな。でも登場人物はそんなこと悩んでもしょうがないじゃん。悩むくらいなら酒場とか行って毎日酒飲んでるほうが有意義だろ。

男:ってことは今がそういう状態ってことか?

友:そうそう。これがクリア後のオマケ要素のひとつ《親友と酒を飲み交わす》イベントだ。

男:お前なんか親友じゃねえよ。俺を真っ当な人間から遠ざける悪友だ。

友:ひっでぇなぁ。お前みたいな根暗なやつと楽しく飲めるのは俺くらいだろ。

男:楽しんでるのはお前だけだ。俺は別に――まぁ、楽しくなくはないけど。

友:はい、デレましたー。素直に『いっつも楽しくお話してくれてありがとう。わたし男だけど、友くんになら抱かれてもいい』とか言っちゃっていいのにな。まぁ、俺は女性しかそういう目で見れないから気持ちには応えられないんだけど。ごめんな。

男:死ね。

友:こわっ。めっちゃ睨んでる。あ、そんなことより枝豆お代わり頼もうぜ。ついでにもう一杯いこうか。お前は?

男:--熱燗。

友:おっ、いいねぇ。そろそろ熱々の日本酒を飲むのに良い季節になってきたよな。一合頼んでおちょこ二つ頼もうか。すいませーん。

男:ちゃんと呼ぶボタンがここにあるだろ。これ使えよ。

友:そこに店員のお姉ちゃんいたからさ。ボタン使うより早いだろ。ってかそういうところだぞ。何でもかんでも機械に頼ろうとする。ここは生きてる人間が大勢いるんだから、言葉と言葉のコミュニケーションを育むべきだろ。あれ?お姉さん来ないな。すいませーん。え、呼び鈴ボタン使えって?はい、わかりました。おい、なんだその勝ち誇った顔は。

男:大手のチェーン居酒屋なんて全部機械で動いてるようなもんだろ。機械に従って人間が動いてんだよ。このデジタル化されたご時世で言葉と言葉のコミュニケーションなんて寒いこと言ってんのはお前くらいだ。

友:俺が時代遅れみたいな言い方すんなって。大事だろ、コム二、コミュニュ、コミュニュケーション。

男:言えてねえし。スマホ使えば噛むことも言い間違えることもなく相手に伝えられるぞ。

友:いや、そんなこともない。この前な、気になる子とメッセージアプリでやり取りしててさ。お互い好きな音楽が一緒だったんだよ。でも、彼女の方が知識レベル上でさ、俺が全然知らない曲とかエピソードとか語ってくれて嬉しくなっちゃってとっさに『そんなこと知らなかったしね!』って送ったつもりが『そんなこと知らなった死ね!』って『しね』が漢字の『死』に変換されて送られててさ。俺がキレたみたいな空気になっちゃったんだよね。あれはほんとにまいった。

男:スマホも使いこなせてないのか。可哀そうなやつだな。

友:そんな目で見るなよ。やめろ、俺は可哀そうなやつなんかじゃない。

男:ほら、熱燗きたぞ。まぁ飲めって。

友:――あぁー、旨い。脳に響き渡るぅ。うわっ体めっちゃポカポカしてきた。そんでお前の悩みは解決したか?

男:いまさら話を戻すのかよ。話それすぎて全然相談に乗ってなかっただろ。

友:いやいや、お前が『会社が厳しくて辛いー』言ってたから的確なアドバイスしたじゃん。気楽にやれって。

男:ぜんぜん言ってなかったろ。今のところ変なゲームクリア後の人生観とお前のスマホ失敗エピソードしか話題になってない。だいたいこういうのって相談持ちかける側の話をきちんと聞いた上でアドバイスすんだろ。開始早々べらべらしゃべりやがって。

友:悪い悪い。そんなら聞き役に徹するわ。『聞き役の友』として全世界に名を馳せてやるわ。カモン。

男:――いい。なんかそういう気分でもなくなった。

友:なんだよ。もっと自分出していこうぜ。言いたいことって言ったほうが絶対すっきりする。あ、思い出した。この『言いたいことって言ったほうがすっきりする』ってセリフも失敗談があってさ。前にメッセージでそう送ったつもりが『言いたいこと』の『たいこ』の部分が楽器の『太鼓』に変換されちゃって相手から『良い太鼓と』って返ってきてびっくりしたんだよねぇ。

男:またお前の話になってんじゃねぇか。もうお前の失敗エピソードはいいわ。

友:ダメだなぁ。『聞き役の友』は看板下ろすわ。思ったことを口に出しちゃうんだよなぁ。しゃべるの楽しくてさぁ。お前にも無いんか。これしてると楽しいってやつ

男:特にないね。最近何してても面白くない。

友:最近ってことは昔は何かあったんか。

男:――いや、特にないな。昔っから特に変わんない。

友:そうか?大学のころはもっと楽しそうだった気するけどな。いや、そうでもないか。いっつも暗そうな顔して授業サボって屋上の喫煙所にいたっけな。

男:結局なぁなぁでここまで来ちゃったからな。特に目標もなく何となく大学行って、何となく授業サボって、何となく就職して、何となく今お前と飲んでる。

友:そんなこと言ったら俺も同じようなもんだ。全部行き当たりばったり。大学入ったのだって、途中でやめたのだって全部その時の成り行きだしな。今はやっていけてるけど将来どうなるかもわかんない。

男:全然同じじゃない。お前の場合は自分で行動して選択してる気がする。俺はそうじゃない。トランプの山札の一番上にあるカードを順番に引いてるだけ。お前は山札を崩してバラバラになったカードから選んで引いてる。

友:カードで言ったら別に山札のどこを引いても確率的には一緒だろ?

男:確率的には一緒かもしれない。でも俺は選んでない。選んでもないくせに出たカードが悪いと『なんで俺ばっかりこんなカードなんだ』って思うやつなんだ。それで気づけば俺より悪いカードを持ってるやつがいないか探して、そいつがいると安心する。そんな最低なやつなんだよ。

友:暗いなー。でもさ、次引くカードが良いカードかもしれない。そう思えばいいんじゃない?

男:普通はそう思えないって。どっちかっていうと次のカードを引くのが怖い。次引くカードが今よりも悪いカードだったらどうしようとか思って引く気にすらならない。今のカードが悪いと思いつつも必死でそのカードを守ってしまう自分もいるんだよ。

友:なるほどな。つまりお前がいま持ってるカードってやつがお前の勤めてる会社ってことだろ。

男:まぁ、そういうことだな。

友:そんなら話は簡単だ。ずるしちゃえばいい。

男:は?

友:だから、カードの裏を見てから引けばいいじゃん。そんなの。裏返してカードを確認する。そんで、今持ってるカードよりも良いカードだったらそっちに変えればいいんだよ。

男:あのな、カードは例えであって実際はそうもいかないだろ。

友:そんなこともない。転職活動でもフリーで活動でもなんでもしてみればいいんだよ。それが上手くいきそうだったら今の会社辞めるでいいじゃん。

男:簡単に言ってくれるな。それができないから困ってるんだって。

友:なんでできないの?

男:今の会社拘束時間が長くて転職活動できる時間もないんだよ。かといって睡眠時間を削ると次の日の会社に差し支えるし。

友:時間ね。なるほど。たしかにいっつも忙しそうだもんな。

男:かといってこうやって飲んだりする時間とか久しぶりの休日にゆっくりする時間とかを使いたくないんだよ。いっつもすぐ行動するお前には現状に不平不満言ってるくせに行動できないやつの気持ちなんかわかんないだろ。

友:お前……そんなに俺と飲む時間を大事にしてたのか。なんだよ、恥ずかしいだろ。

男:言いたいのはそこじゃねぇよ。でも、なんか八つ当たりみたいになっってたな。ごめん。

友:いや、そこは気にしてないからいいんだけど。ひとつわかったのは、お前の悩みは会社辞めたいじゃなくてお前自身が変わりたいのに変われないってことだろ。変わろうと思うけど行動が伴わない。どうしたらいいかわかんないってことだ。

男:あぁ、たしかに。結局自分自身の悩みを会社とか他のことに押し付けてるだけなのかもな。

友:だろ?それだったら話が早い。ここがゲームクリア後の世界だと思えばいいんだよ。

男:またその話か?

友:逆にこれ以外言うことないわ。キャラクターがどう行動するかなんてキャラクターにしかわかんねぇし。俺がお前のことを操作するんだったら何か行動させようって思うけど、お前の行動はお前自身が決めるからな。

男:俺自身で決めらんないって話なんだけどな。

友:まぁまあ、それはそれでお前らしいじゃん。行動したくても行動できないってキャラクターもありだろ。ゲームの酒場にだってそういうやつが一人くらいいるもんだって。「村の洞窟に魔物が出て困ってる」って言いながらずっと酒場にいるキャラとかいるじゃん。

男:全然解決策になってなくないか?

友:そもそも解決すべきなのかもわからん。その根暗でうじうじ悩んでんのもお前の特徴だったりするしな。

男:ひでぇ言いようだな。

友:とは言っても、そんなうじうじしてたキャラクターだったやつが変わるところも見てみたいけどな。やっぱり状況や時間によってキャラクターが変化していくのもゲームの醍醐味だろ。そのタイミングは別に劇的じゃなくても、大成功じゃなくても人が変わっていく姿っていうのは良いもんよ。ナルトの漫画読んだことあるだろ?第一話で分身の術できなくて試験落ちてるやつが火影になってくんだぞ。テンション上がるだろ。

男:ゲームから急に漫画の話になったな。

友:いいじゃん別に。そんでナルトって火影になるまでの物語だけどさ、連載何年かかったと思う?15年だってさ。ナルトでさえ夢叶えんのに15年かかってんだから。今から数週間で、とか、今から数年で、とか考えなくていいじゃん。15年単位くらいで考えようぜ。そもそも人間ってそんなにすぐ変われないしな。お前も15年後くらいに脱うじうじ目指せばいいと思うよ。

男:15年って長いな。

友:そうそう。長いんだから何が起こってもおかしくないって。気楽にどっしりやっていこうぜ。さて、そろそろ宴もたけなわですかね。お会計しますか。すいませーん。お姉さん、お会計で。

男:だからボタン使えっての。

28歳。お魚のソーセージがあればお野菜も食べれるよ。

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