意味ないことは素晴らしきこと

Free-Photos / Pixabay

最近はどうも息苦しいことが多い。
そう思いません?

問題と思わないところを問題と切り取って、これは問題だぞって押し付けてきて、その問題のソリューションがこちらです。って紹介されて、それをやってないと古いし遅れてるし非効率だって思われる。なんなの?

周りの人間の不貞とか不健康とかにみんな厳しくて、常にみんなの目を気にして発言やら態度にびくびくびくびく…。

 

なんでもかんでも最先端で時短で健康志向でマーケットインでベストプラクティスなものばかりが生まれていくのはどうかと思うんですよ。
やっぱり時代遅れで非効率で健康に害があって、プロダクトアウトでワーストプラクティスなものがいい。

そんなことを語る友達がいないので、脳内友達に話しかけていたんだけど、ちょうどその時に田島くんを思い出した。

 

 

田島くんと俺は大学時代の飲み仲間だ。大学卒業後は一切会っていないが、学生時代はよく一緒に飲んだものだ。

飲みっぷりと酔いっぷりも非常に痛快だった。酔っ払いの典型で、普段は口数少ないが、酒が入ると気が大きくなっておしゃべりになるし、酒のペースがどんどん早くなっていく。そのうち「生ビール2つください」と俺のぶんのビールまで勝手に頼み出す。すると自然と俺の酒を飲むペースも早くなっていって朝方には二人でべろんべろんになる。非常に退廃的な生活だった。

 

田島くんは同じ年に大学に入ったが、2浪だったので年齢的には2つ上だった。そして俺が大学4年生の時田島くんは大学3年生だった。彼は気づかないうちに留年していた。

 

そんな田島くんとの一番の思い出は年越しライブに行ったことだ。
俺と田島くんは地元のライブハウスの年越しイベントに来ていた。有名なバンドがでるイベントというよりは、地元で活動しているバンドマン達がたくさん出演して最後はライブハウスに来ている人みんなで飲む、みたいなイベントだ。

 

ライブハウスに着くなり「寒いな。早く酒飲もうぜ」と飲む気満々の田島くん。ちなみにライブハウスに来るまでにすでに缶ビールを開けている。本当に頼もしい奴だ。せっかくなので俺も店の缶ビールを注文して飲みながら出演するバンドを楽しむことにした。

 

予想通り、田島くんの注文ペースは時間の経過とともに早くなっていき、終盤の頃には音楽で揺れているのか酔っ払って足元がおぼつかないのかわからなかった。地元で長年活動している強面のバンドマンが田島くんのことを睨んでて少し怖かった。ただ酔っ払うと気が大きなるので気にも留めず「この店のビール全部無くしてやろうぜ」と語りかけて来た。ここまでは比較的平和にことが運んでいた。

 

事件はライブが全て終わって打ち上げに移行した時に起きた。

田島くんは打ち上げが始まった頃にはべろんべろんな状態だった。もう話もおぼつかない状態だったので、田島くんに水を与えて休ませてから、その日来ていた人とか出演者の人とかと話していた。
特に何事もなく日付も代わり1時が過ぎた頃、田島くんがのそっと起き上がった。
トイレかと思ったが違う。嘔吐かとも思ったが違う。お酒を注文しに行った。筋金入りの酒飲みだった。そしてなぜかライブハウスの店長の元へ向かって行った。

 

「おい!○○(店長の名前)!全然飲んでないな!飲めよ!」

 

彼は笑顔でそう言った。急に目上の人に、しかも皆から慕われているライブハウスの店長さんにタメ口でお酒を勧める。どういう思考が働いたのか全然わからない。その場は一瞬凍りついた。

 

「ゔぉおい!〇〇(店長さんの名前)さんになんちゅう口の聞き方しとんvwivnwrboaw;vrwbrnn」

 

凍りついた場を一瞬にして沸騰させたのは長年このライブハウスでお世話になっているだろう強面のバンドマンの人だ。お酒が入っていたこともあり、怒りはあっという間にピークになっていた。

田島くんは田島くんでなぜかその怒った人に立ち向かい、周りの人が止めてもみくちゃ状態になった。二人は引き剥がされ、俺は田島くんと一緒にバックヤードに連れて行かれた。

「立川くん、悪いんだけどこの人(田島くん)と一緒に出ていってもらえるかな? こんな空気になっちゃったし、さっきのバンドマンにはこっちから謝っておくからさ」

さっきもみくちゃにあったせいなのか、田島くんは再び酔っ払い出したのか頭がグラグラしていた。こうなってしまっては仕方がない。俺は田島くんを連れて店を出た。

 

1月1日の午前1時過ぎ。終電も無く帰れもしない状態で、外に放り出されてしまった。そのライブハウスは繁華街から少し離れているため、田島くんの肩を担ぎしばらく歩いた。その頃には田島くんは何を話しかけても「おう」「ああ」しか言わない相槌人形と化していた。ライブハウスでもずっとそうなっていれば良かったのに。そう思いながら凍える中歩き、始発まで時間の潰せる飲み屋を探し回った。

 

後日、その日のことを聞いてみると「ライブが終わる前からすでに記憶がなくなっている」とのことで、本人が起こした事件も全く覚えていなかった。ただもみくちゃになった時に腕を掴まれているため、腕が痛いと言っていた。それをきっかけにお酒をやめたとかそんな話ではない。彼は変わらなかった。その後もお酒を飲み続け度々人に迷惑をかけていた。

 

 

今思えば、そんな田島くんの行動こそこの時代に足りない要素なのではないか。お酒飲んだくれるのなんて今さら流行んないし、暴飲は不健康だし浪人と留年で時代に取り残され、ライブハウスではワーストプラクティスをやってのけた。問題は問題のままだし、ソリューションの押し付けもない。

そんな田島くんのようなコンテンツをこれから目指して行こうと思ってます。
わかばたいむす。どうぞよろしく。

28歳。男性。太っているか太っていないかでいったらデブ。わかばたいむす副編集長。

お問い合わせはこちら